モリのいる場所
2018年・99分・
監督:沖田修一
重め暗めなものを見まくっていたので癒されたくて選んだ映画です。
あと時代設定が私が産まれた年代あたりなので、その時代の何気ない様子を知りたいという気持ちもありました。
⚠以下ネタバレあります
天皇陛下の「これは何歳の子供がかいた絵ですか?」で始まるこの映画。
30年もの間ほとんど外出することなく庭の生命を描き続け97歳で死去するまで生涯現役の画家だった熊谷守一さんを主人公に晩年のある一日をフィクションで描いた映画です。
近所の人、カメラマン、遠方からきた温泉旅館の人、建築会社の人、謎の男など、たくさんの人が訪れ、あたたかくて楽しくて面白い一日が描かれています。多くは描かれていませんが、垣間見える夫婦の歴史も見どころです。
一見気難しそうな守一さん、しかしふれあうと守一さんの優しさ温かさ感性に引き付けられます。
私的見どころ
柔らかい日差しの中のミミズクがかわいい
緑の木々の中の守一さんの表情(一瞬ドキッとする)
庭の木々や葉や虫を見つめる守一さんの目
温泉看板を書くシーン
アリの歩き方をジーっと見るシーン(左の二番目の足から歩き出す?
めちゃめちゃ素敵な写真を「熊みたい」「鬼婆みたいだな」←ここ最高
畳の間に入っていた十円玉
家の外に出るシーン
文化勲章の電話のシーン(最後ドリフ
強面の青木くんの親心
買いすぎたお肉を、建設会社の人達に振る舞うシーン
完成したマンションの屋上から熊谷家を見るシーン
私的推しセリフ
「これは何歳の子供がかいた絵ですか?」
「もう燃やすものなんて残っていませんよ」
「人間頭の真後ろが一番急所だよ」
「今まで生えていたか?」
「池は遠いな」「頑張ってくださーい」
「あ、見た」「あ、こっちきた」「あ、動いた」
「先生は新幹線を知らないから」
「こうなったら旅館の名前ごと変えるってのは」
「そんなものもらったら人がいっぱい来ちゃう」「いらないそうです」
「おい、カレーとうどんを一緒にするな」
「この庭は主人の全てやからね」
「下手だ、下手ですね、下手でいい、上手は先が見えちまいますから、下手も絵のうちです」
「あの池はとうとう宇宙へと繋がりました」「あぁそうですか」
「そんなことしたらまた母ちゃんが困ってしまいますから、それが一番困る!!」
「もう一度人生を送り返すとできたらどうかな」「それは嫌だわ、だって疲れるもん」
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豊かな庭、映画内の葉っぱや花やカマキリや石やアリの行列やたくさんの自然の映像がとてもきれいです。虫なんか、撮るの大変だっただろうな。
何といっても、長年一緒に暮らす夫婦のライトなコミュニケーションの取り方がシュールだし信頼関係が深い夫婦だなとほっこりしました。会話自体はライトだけど、奥底にある愛情を感じることができました。
私、旦那にも娘にも良かれと思って、あーしたら?こーしたら?と色々言ってしまうのですが、こういう多くを語らず相手を尊重できる人はとても素敵だなと感じました。目標にしたい。
近所に建つマンションの建設会社との関わりも面白かったです。建設会社との問題も何気ない流れでクリアしていったように見えましたが、守一さんの庭の生物への思いや、その守一さんの気持ちを守りたい奥さんや、関わってくる人への夫婦の思いや、肉を買い過ぎた独身男性に目がない美恵ちゃん等々、色々ものが重なりあっていて、とても奥深くて良かったです。
たまに青年たちが映るのですが、私が幼少期の写真に写っている大人たちがて着ているファッションで嬉しくなりました。
家の造り、家具や電話や置物飾り物なども懐かしい感じで、今はない古い実家を思い出し何だか切ない気持ちにもなりましたが、笑顔になれる映画でした。見てよかった!
覚悟してください。
カレーうどん食べたくなりますw